![]() | 「デキる人」の脳 本田 直之 三笠書房 2009-07-07 by G-Tools |
タイトルだけ見るといかにも昨今の脳科学本ブームに便乗した本に見えるが、その実はNLP(神経言語プログラミング)系の自己啓発本。NLPとは簡単に言えば、プラスの言葉を使った自己暗示のテクニックだが、本書は巷の凡百のNLP本とは一線を画す強力なテクニックを紹介している。これほどすぐに効果が実感できるテクニックも珍しいので今回紹介してみることにした。
それが、「アフォーメーション」と呼ばれるテクニックだ。
なんだそれなら知っているよという方もいるかもしれないが、「アファーメーション」ではない。「アフォーメーション」である。「アファーメーション」肯定的な言葉を自分に投げかけるのに対し、「アフォーメーション」は肯定的な「質問」を自分に投げかけるのである。
例えば、今までのNLPでは、「私はプレゼンが得意である」というようなプラスの言葉を自分に投げかけるだけだった。しかし、「アフォーメーション」の場合は、「なぜ自分はプレゼンを上手にこなすことができるのだろう」というように、自分が高めたいことを既に達成していると仮定した質問を自分に投げかけるのである。
脳というものは質問を受けると自動的に答えを探すようにできている。そのため、このようなプラスの質問をなげかけていると、自然と自分の脳がプラスの思考パターンにつくりかえられていくのだという。そうすると、「自分が既に持っているもの」に注意が向けられるようになり、前向きな考えを持てるようになるのだという。
「私たちに必要なのは正しい思考パターンを『つくる』ことで、強引に『ポジティブ・シンキング』によって『言い聞かせる』ことではありません」(P.56)
これは一見シンプルなテクニックだが、単純にプラスの内容を自分に言い聞かせるだけの従来のNLPとはケタ違いの効果がある。
試しにやってみよう。
本書ではアフォーメーションの実践ステップとして次の4つを紹介している。
@自分ののぞみを明確にする
A望みが叶っていると仮定して自分に尋ねる
B質問を工夫して答えを待つ
C前向きな仮定に基づいて行動する
例えば、すごく身近な望みとして「文章が上手くなりたい」という目標を設定してみる。そして、次にその望みが叶っていると仮定して自分に質問をしてみるのだ。
「なぜ自分はこんなに文章が上手いのだろう?」
これを繰り返し脳に質問していると、その内モヤモヤっと答えが出てくるのである。
私の場合をお話すると、過去に人から文章が上手いといわれたときの記憶が蘇ってきて、そのように誉められた文章は決まって「メールの文章」だったことを思い出した。つまり、レポートや作文のようなものよりも、ダイレクトに読み手に届くもの、読み手の顔が見えているものの方が、文章が上手く書けるケースが多かったのだ。
このことから私は、ブログやレポートなどでも、読み手を明確に想定して書くことの大切さを改めて認識することができたのである。
これはあくまで私の例で、人によって自分から出てくる答えは異なるだろう。しかし、この「自分から出てくる」ということが一番大切なのだ。「自分から出てくる」ということは、「自分が既に持っている要素」ということである。「アフォーメーション」とは、このように自分が既に持っているものに注意を向けて、自分の脳をプラスにつくり変えてパフォーマンスを高めるためのテクニックなのである。
このテクニックをアカデミック・スキルに応用すれば、実に様々な質問が思いつく。
・なぜ私はこんなに多くの本を読むことができるのだろう?
・なぜ私はこんなに難しい本を理解できるのだろう?
・なぜ私はディベートの際に的確な意見をたくさん言えるのだろう?
・なぜ私は独創的なアイデアが次々に思いつくのだろう?
・なぜ私は質の高い論文を次々と生産することができるのだろう?
皆さんも騙されたと思って是非試してみて欲しい。
その効果の高さに必ずや驚かれるはずだ。