2008年10月13日

見えない敵を恐れる住民―ゲーテッド・コミュニティ

■日本に台頭するゲーテッド・コミュニティ

本日の朝日新聞朝刊1面の「囲われた街 買う安心」で日本初の「ゲーテッド・コミュニティー(要塞の街)」が取り上げられていた。

「兵庫県芦屋市の浜辺にあるベルポート芦屋。マリーナを備えたこの住宅地は、日本初とされるゲーテッド・コミュニティー(要塞の街)だ。敷地は甲子園球場のグラウンドの1.5倍。外周は高さ約2mのフェンスと赤外線センサー、監視カメラ数十代に守られ、正面ゲートの脇では数人の警備員が24時間態勢で目を光らせている。」(朝日新聞2008年10月13日朝刊)

ベルポート芦屋の他にゲーテッド型住居として紹介されているのは以下。

広尾ガーデンフォレスト
マスタービューレジデンス
グローリオ芦花公園

上記リンクの通り、ゲーテッド型住居のターゲットは主に富裕層だが、
中にはマザーヴィレッジ岐阜の様に中流階級向けの住居もあるという。

■ゲーテッド・コミュニティと格差

朝日新聞がなぜ1面でゲーテッド・コミュニティなどを取り上げるのだろうか。紙面では、「周辺地域との隔絶」、「格差の当然視」などが問題とされていた。「格差の当然視」というのは、早大教授の齋藤純一氏の見解で、ゲーテッド型住居の台頭は、「効率を優先し、格差拡大を当然視する現代日本の象徴的な変化」だという。

つまり、朝日はネオリベラリズムに端を発する格差拡大に批判的なので、今回の特集もその意向を反映してのものだろう。そのせいか全体的にゲーテッド・コミュニティに対する批判的なムードが記事から漂っている。

区画全体をフェンスで囲い、内部を無数の監視カメラで監視となると、確かに周辺住民から見れば異様な、不気味な光景であろう。しかし、私はそういう、周辺から隔絶されてでも安全な家に住みたくなる人の気持ちも分からなくはないなと思っている。

■メディアが煽る「不安」

私たちはメディアを通して日々世界中の人たちの「死の運命」を目撃している。犯罪や交通事故のニュースを見るたびに「自分ではなくてよかった」と安堵すると同時に、「次は自分なのではないか」という死神からの視線に怯えているのである。

実はメディアによる事件事故の報道はそれ自体過剰になると、必要以上に視聴者の恐怖心を煽るとして問題視する意見もある。例えばマスコミ研究の分野でガーブナーは、テレビ番組の暴力シーンを継続的に視聴することで、視聴者の社会認識が「培養」され、社会に対する危険度の認識が高まることを指摘した。(吉見俊也『メディア文化論』など)

つまり、ゲーテッド・コミュニティの様な心配症な富裕層向けの住居の需要が高まるのも、テレビや新聞をはじめとしたマスメディアの過剰報道が原因とも言えるのだ。ゲーテッド・コミュニティの住民はマスコミが煽る見えない敵の存在に怯え、せめてもの心の安堵を手に入れるためにその豊かな資産で安心を買っているわけだ。

■そして完全なる監視社会へ

毎日のように「人の死の運命」のシャワーを浴び続けている今のメディア環境は、やはり異常なのではないかと思う。私自身は「なんでみんな平気な顔して生きていられるんだ?」と周囲の人間に対して思ったことがあるが、みんな内心「見えない敵」に怯えているのである。

それではマスコミから事件事故の報道を一切排除すればいいのかというと、それはそれで問題になる。マスコミの過剰報道は問題だが、取り上げている事件事故自体は、この同じ空の下で現実に起こっている出来事だからである。

結局我々はこれからも「見えない敵」の恐怖を少しでも和らげるため、企業が提供する「安心プラン」に金を払い続ける。そして最終的に我々は安心と引き換えに国家や企業による徹底的な監視と管理を何の懸念もなく受け入れるようになるだろう。映画マトリックスの機械に支配された世界を彷彿とする完全なる監視・管理社会が台頭するのである。


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posted by Tommy at 19:32| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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