2008年10月24日

制度改正までに流れるたくさんの血

■労働問題関連の新施策発表

★年長フリーターの正規雇用、企業に助成金 厚労省方針

「厚生労働省は21日、雇用対策として年長フリーターらを新たに正社員として雇う企業に対し、1人あたり50万〜100万円程度の助成金を出す制度を作る方針を固めた。3年程度の時限措置とする。与党も同様の方針を固めており、政府が今月中にまとめる追加経済対策に、若者の雇用対策の目玉として盛り込む考えだ。」(2008年10月21日asahi.com)

これまで見過ごされがちであった、年長フリーターを対象とした施策がやっと出てきた。しかし、対象は25〜39歳で、それ以上の年代は対象になっていない。再就職は年齢が上がるにつれて難しくなるはずなので、40歳以上のフリーターを支援する仕組みも早急に構築する必要がある。

★ニート・引きこもりの自立支援へ「若者新法」 政府方針

「政府は23日、ニートや引きこもりの若者の自立を支援するための「若者支援新法(仮称)」を制定する方針を決めた。新法の柱は、地域ごとに官民で協議会を作り、困難を抱える若者を多面的・長期的に支援する仕組みを作ることを想定している。来年の通常国会への法案提出を目指す。」(2008年10月24日asahi.com)

何だか安倍首相の時の施策に似ているが、今度は「多面的・長期的に支援」とあるように、再就職後のアフターフォローなども視野に入れているようだ。安倍政権時の労働施策は大量のコストを費やした割には問題の根本的な解決には至らなかったと批判されている。今度こそ問題の根治に結びつくよう期待したい。

それにしても、フリーターや引きこもりなどは何年も前から議論されていることなのに、政府というのは何でこうも対策を立てるのに時間がかかるのだろう。毎回何かしらの問題が噴出して収拾がつかなくなってきてから初めて、ぼちぼち対策が施され始める。

■制度改正までに流されるたくさんの血

最近、経済評論家の勝間和代が日本の労働問題について論じた『日本を変えよう』という本を出版した。

勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan
勝間和代の日本を変えよう Lifehacking Japan

この本は正直、玄田有史や本田由紀など教育・労働関連の専門書と比べると、分析も浅いし内容的に新しいことは言っていない。

働く過剰 大人のための若者読本 日本の〈現代〉12
働く過剰  大人のための若者読本  日本の〈現代〉12

軋む社会 教育・仕事・若者の現在
軋む社会 教育・仕事・若者の現在

しかし、この本の価値は専門書として云々という所には全くない。経済評論家として今を時めく勝間和代が日本の問題について語るということ自体に意味がある。勝間氏が語ることによって、普段労働問題なんて気にもとめていないようなビジネスマンにまで、広く問題を知らしめることができる。そのこと自体に価値があるのだ。

しかも勝間氏は、単なる評論家ではなく行動するビジネスパーソンだ。国内向けではないが、既に本の印税の20%を世界の慈善活動に寄付する「Chabo!」などのプログラムも立ち上げている。単に発言するだけでなく、実際に行動して社会を変えていく力を持った人物なのだ。



その勝間氏が、この本の中で貧困問題の専門家である雨宮処凛と対談をしている。なにげに私はこの章が本の中で一番面白い部分だと思っている。対談の冒頭で勝間氏が雨宮氏に身も蓋もない発言をしてしまっている所にまず笑った。

「今日は正直な話をしたほうがいいと思うので、あえて聞いてしまいますが、私、中学からずっと慶応なんですよ。そうすると、私の身の回りには、だんなが就職に困っているとか、フリーターになったとかいう人がいなくて。雨宮さんのルポを読んでも、実感としてわからないところがあります、正直にいうと」(P.166)

あちゃ〜できるビジネスパーソン勝間節炸裂!という感じである。しかし勝間氏のいい所はその後雨宮氏の話を聞いていくうちにどんどん労働問題の深刻さが分かっていって考えを変えていく所だ。最終的にリアリスト勝間和代として、労働問題解決のための具体的なアクションいくつも提言していた。

勝間氏は対談の途中で次のような発言をしていた。

「私、よく厚労省の人たちと話をするんですけど。結局当事者たちが声を上げてくれて、メディアの空気なり市民の空気が政治に伝わってこないと、官僚としては動きづらいということをすごくよくいわれるんですよ」(P.184)

私はこれは官僚の怠慢だと思う。冒頭に書いたようにフリーターやニートなどの労働問題は何年も前から議論されてきた。その間政府もいくつか施策は出してきているがどれも後手後手の印象だった。

私も組織に属していた人間として、これまでの制度を見直すという「イレギュラーな仕事」がどれほど大変かはよく分かる。ルーティンワークで硬直した組織の中で、周囲の人間の流れを変えていくのは確かに至難の業ではある。

しかし、国政の場合は、そのような対応の遅れのせいで苦しむ人が何千人、何万人(あるいはそれ以上)という単位で生まれてくるのだ。一般企業の制度改正とは訳が違う。

飲酒運転や最近だと妊婦さんの病院受け入れの問題などもそうだが、制度が改正されるまでに、いったいどれだけたくさんの人が血を流さなければいけないのだろう。

毎回、

 痛ましい事件・事故の発生→メディアの過剰報道→世論の形成→法改正

という手続きを踏まなければ制度の改正はできないのだろうか?

私は、例え理想論と言われようが、犠牲者を出す前に制度を変えていく方法を考えるべきだと思うし、自分自身そういう努力をしていきたいと思う。

そのためにも、社会問題を発見することをもっとも得意とする社会学者は社会的にもっと影響力を持つべきだと思うし、これからは勝間氏のような経済的な影響力も持った人物とも連携して、社会をよりよいものに変えていく努力をすべきだと思う。



★人気ブログランキングに参加しています。
★よろしければクリックお願いいたします。

人気ブログランキングへ
タグ:労働問題
posted by Tommy at 12:21| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。