2009年07月10日

児童ポルノURL掲載問題について考える

海外の児童ポルノ・アドレス掲載、19歳私大生ら摘発

 「海外の児童ポルノサイトのアドレスをインターネット掲示板に掲載したとして、神奈川県警が沖縄県宜野湾市のパチンコ店店員(37)と鹿児島市の飲食店店員(37)の男2人を、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)容疑などで逮捕していたことがわかった。


 捜査関係者が明らかにした。海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲載した同法違反容疑での立件は全国で初めて。県警は近く、この掲示板を開設した千葉県流山市の私立大2年の少年(19)を同法違反ほう助容疑などで横浜地検小田原支部に書類送検する。」


私は法律については全く門外漢なので分からないが、URLを掲載しただけで逮捕されるというのは、常識的な感覚からはかけ離れており、ショッキングな事件だ。しかし、この問題を考えることで、ネットにおける「リンクを貼る」という行為の本質が見えてくる。

まず、この問題に関しては小飼弾氏が次のような意見を述べている。

news - URLを掲示しただけで刑事犯?

「これがアウトなら、検索エンジンは全部クロにしないと鼎の軽重が問われるでしょう>当局各位」

「警鐘、大いに鳴りましたよ。
『言論の自由終了のお報せ』という警鐘が。
言論の自由どころか、自由な言論へのリンクさえ禁じられるわけですから。」


http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51232218.html

上記は次のような2つの論点に整理できる。

@個人サイトが違法でなぜ検索サイトは違法にならないのか。
Aリンクを貼ることを制限することは、言論の自由、およびそれへのリンクの自由すら禁じることになるのではないか。


まず@について考えて見よう。小飼氏が言うように、検索エンジンで児童ポルノを検索すると、検索結果には大量の「違法サイト」へのリンクが表示されることになる。URLを貼るだけで違法になるのであれば、検索サイトも罰せられることになるのではないか?これが小飼氏の問題提起だ。ここにネットを考える上で決して見過ごすことのできない、重要な論点が含まれている。

なぜ個人サイトでリンクを貼ると違法になり、検索サイトでは違法にならないのか。それは、一般の人々が、検索結果の表示を、ある種の「公共空間」と見なしているからなのではないか。検索エンジンでは、ロボットが自動的にURL情報を収集して検索結果を表示している。つまり、ロボット(技術)が、いかなる価値判断や倫理とも無縁にリンクを貼り付けてパブリックな空間を構築しているものであると、誰もが想定しているのではないか。

例えば、ある街の電柱に大麻販売のポスターが貼られていたとして、その街が訴えられるということはないだろう。しかし、個人経営のバーなどにそれが貼られていていたら、そのバーの主人も罪を咎められる。そういうロジックなのではないか。

次にAについて考えて見よう。ネットにおける「リンクの貼り付け」という行為は単に言論の自由の問題に留まらない。それは小飼氏が言うような「自由な言論へのリンク」という視点とは別の次元の話しだ。つまり、ネットにおける「リンクの貼り付け」という行為は、単に言論のレベルの話ではなく、具体的な「行動」のレベルの話になってくるのだ。

テレビや新聞のような一方通行のマスメディアでは、経験はすべて言論の受容というレベルに留まるであろう。しかし、インターネットのような双方向メディアの場合は、受け手自身もその情報に基づいて「実際に」具体的な行動をすることができるのである。例えば、ショッピングサイトでは実際に買い物が出来てしまうし、就職サイトでは就職先へのエントリーができてしまう。また、受け手がさまざまな情報を組み合わせて二次創作を行ってそれを公開して、新たな空間を「実際に」作ることもできる。

つまり、サイバースペースにおいては、リンクを貼るという行為は、言論のレベルに留まるものではなく、具体的な行動を伴う極めて「現実的」な行為なのだ。違法サイトへのURLを貼り付けるということは、現実世界で違法な店への入り口を示して誘導しているのとまったく同じ行為なのだ。そこでは、画像や動画を収集したり、商品を購入したり、実際に人と出会ったりなど、現実的な世界が待っている。

以上の論点からすると、仮にリンク先のURLが本当に「違法」なのであれば、確かにURLの貼り付けも一定の罪に値するのではないかと考えられる。しかし、これはあくまでリンク先のURLが違法であればの話だ。その問題に関しては、今回のエントリではひとまず置いておくことにする。

それに加えて、もう1点重要なのが、今回の事件で問題となったサイトの「コンテキスト」だ。たとえば、違法サイトへの「誘導」を目的としたコンテキストでリンクを貼ったのであれば一定の罪が認められるかもしれないが、違法サイトの「摘発」などを目的としたコンテキストで貼ったリンクも違法とされるのであれば、それこそ言語道断、言論の自由の不当な侵害だ。

ネットと法に関する問題では、上記のような複雑な問題が放置された状態で「児童ポルノを紹介したんだから悪い」というように議論が単純化され世論が形成されていく。そしていつの間にか法案が成立してしまっているのである。この問題は、政治家や法律家だけで解決できるものでは決してなく、技術者や経済学者、社会学者など多くの専門家が参加して学際的な議論を展開すべき問題なのである。
posted by Tommy at 09:32| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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